翌月10日に数字が見えている会社は23.6%|月次決算が遅い会社の共通点7つ

社長から「先月の数字はまだ?」と聞かれ、経理が「もう少しお待ちください」と答える。毎月のように繰り返されるこの会話に、心当たりがある会社も多いはずです。

月次決算が遅れる原因は、経理の処理が遅いからだと思いがちです。しかし、さまざまな調査を見ていくと、そうではないことが分かってきます。

毎月、その月の売上や経費、お金の出入りを締めて、会社の成績表にあたる試算表を作る。この月次決算が遅い会社には、7つの共通点があります。

月次決算が遅いと何が困るのか

そもそも、世の中の会社はどれくらいの速さで月次決算を終えているのでしょうか。

従業員99人以下の会社の経営者に聞いた2026年9月の調査では、試算表を翌月10日以内に確認できている会社は23.6%でした。4社に3社は、10日を過ぎても先月の数字が見えていません。さらに小さな売上1,000万円以下の会社では、42.9%がそもそも試算表を作っていないという結果も出ています(日本商工会議所・東京商工会議所調査)。

一方で、上場準備の会社には、翌月10営業日前後で決算書を作り、15日前後には取締役会に報告することが求められます(KPMG)。営業日とは、土日や祝日を除いた、会社が動いている日のことです。

数字が出るのが遅いと、経営の判断が1か月ずつ遅れます。ある商品の利益が落ちているのに、それが分かるのが翌月の20日だと、手を打つのはさらにその先になります。

人手不足の影響を聞いた調査でも、経理担当者の32.9%が「月次決算が遅れる」と答えています。人が足りない会社ほど、遅れやすいのです。

現場と取引先から書類が来ない

翌月10日に数字が見えている会社は23.6%|月次決算が遅い会社の共通点7つの解説スライド

では、月次決算が遅い会社にはどんな共通点があるのでしょうか。

1つ目は、現場からの経費の申請が遅いことです。経費精算サービスを提供するLayerXの調査では、月次決算が遅れる主な原因は経理の処理能力不足ではなく、現場からの申請の遅れだとまとめています。

さらに、90.0%の会社で申請の差し戻しが起きています。差し戻しの原因で一番多いのは、領収書などの証憑(取引があったことを示す書類)の不備で46.7%でした。領収書がない、金額が違うと戻すたびに、締めが1日、2日と延びていきます。

興味深いのは、締め日が早い会社ほど、差し戻しや修正が多い傾向があるという点です。速く締めようとするほど、現場から上がってくる書類の質が問われるのです。

2つ目は、取引先からの請求書が来ない、または紙で来ることです。請求書は紙が多いと答えた会社が半数以上という調査もあります。紙で届くと、開封して、読んで、入力するまでに時間がかかります。郵便の到着を待っているだけで、月初の数日がなくなります。

インボイス制度が始まってから、確認作業も増えました。Sansanの調査では、制度導入後、月次決算にかかる時間が1人あたり月に11.9時間増えたという結果が出ています。届いた請求書が制度に合っているかを目で確かめる作業が増えたためです。

手入力と目視の照合に時間がかかる

3つ目は、手入力とExcelでの転記です。マネーフォワードの調査では、決算の数字を間違えた原因の1位が手入力のミスで40.8%、Excelの計算式の不備も24.6%ありました。間違いが見つかると、確かめ直しで締めがまた延びます。

弥生の調査でも、経理業務の6割以上を手作業でやっている会社が約7割にのぼります。

4つ目は、入金の確認を目で見て照らし合わせていることです。Sansanの調査では、入金確認の88.0%が目視で行われ、その時間は月に約173時間にのぼります。

173時間というと、1人分の1か月の勤務時間に相当する長さです。銀行の明細に出てくる振込名義と請求先の会社名が一致しないことが多く、それを1件ずつ探しているのです。

担当者しか分からず、月末にまとめてやる

翌月10日に数字が見えている会社は23.6%|月次決算が遅い会社の共通点7つの解説スライド

5つ目は、担当者しか分からないことです。TOKIUMの調査では、66.1%の会社で仕訳の判断が特定の人に頼った状態になっており、マニュアルがない、または足りない会社が73.7%でした。その人が休むと、締めが止まってしまいます。

6つ目は、月末と月初にまとめてやることです。経理の課題を聞いた調査で、「月末月初に業務が集中する」が33.3%挙がっています。月の途中で少しずつ進めておけば、月初の作業はかなり減ります。

そして7つ目が、締めの期限と段取りが決まっていないことです。書類がそろうのを待ってから動く、という進め方です。

会計ソフトのOBCが取材した上場企業は、請求書の原本が届くのを待たずに処理を進めることで、6営業日で締めています。別の会社は、来るはずの請求書を一覧にした未着請求書シートを作り、届いていないものを先に追いかけています。

早い会社は、何をしているのか

実際に早くした会社は、何を変えたのでしょうか。

マネーフォワードの経理部は、月次決算を10営業日から4営業日まで縮めたと自社のセミナーで紹介しています。そのやり方はツールではなく、工場の生産管理の考え方でした。作業ごとに、やめられないか、まとめられないか、順番を入れ替えられないか、簡単にできないかを1つずつ点検し、締めまでの一番長い作業の流れを短くしていったそうです。

中小企業の例もあります。従業員50人から99人のPIGNUSでは、経費精算サービスを使い、法人カードの明細の確定が21日から4営業日になりました。領収書の催促を自動にし、月初の3営業日でほぼ回収できるようになったそうです。

大きな会社では、ジャックスがグループ全体をまとめた連結の月次決算を4営業日から2営業日にしました。どちらも、書類が集まるまでの日数を縮めたことが効いています。

結局、何から始めればよいのでしょうか。順番が大事です。

まず、「試算表は翌月○営業日まで」と社内の期限を決めます。次に、締めの作業をチェックリストにして、担当者以外でも回せるようにします。そして、届いていない書類を先に追いかける一覧を作ります。

ここまでやってから、ツールやAIを入れます。逆の順番だと、ばらばらのやり方のまま自動にすることになってしまいます。

まとめ

速さは、経理の手ではなく段取りで決まります。今回の要点は以下の通りです。

  • 翌月10日以内に試算表を確認できている会社は23.6%。遅れると経営の判断が1か月ずつ遅れる。
  • 月次決算が遅い会社の共通点7つ。現場の申請が遅い、請求書が来ない、手入力、目視の照合、担当者しか分からない、月末にまとめてやる、締めの期限と段取りが決まっていない。
  • 早い会社は、期限を決め、チェックリストにし、来ていない書類を先に追いかけている。ツールはその後に導入する。

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