
請求書の受け取りという、人の手が入る仕事で利益は出るのだろうか。
紙やPDFで届く請求書を代わりに受け取り、AIが入力し、人が手で入力し、人がチェックする。Sansanの請求書受領サービスである**Bill One**は、こうした人力のオペレーションを含む事業だ。
2026年10月に発表された2027年5月期第1四半期決算で、そのBill Oneがサービス開始から6年で黒字になった。
名刺管理事業と合わせた全体の調整後営業利益は24億7,500万円と、前年の4倍以上に達している。
AIと人の組み合わせは、どのようにして利益を生む事業になったのか。決算資料からその構造を読み解く。
広告を減らしても契約が伸びる構造
黒字化の要因は、売上の伸びと費用の抑制の両方にある。
前の期である2026年5月期、Bill Oneは136億7,900万円の売上に対し、16億2,700万円の赤字を出していた。
それが今期の第1四半期には、売上が40億6,700万円(前年同期比プラス34.4%)に伸び、黒字に転換した。Bill One単体の利益額は開示されていないが、会社全体の利益増に大きく寄与している。
費用の内訳を見ると、広告宣伝費が約22億円から約15億円へと31.3%減っている。広告にかけるお金を3割減らしたのだ。
広告を減らせば、契約の伸びは鈍るはずだ。
ところが、有料契約は5,468件と1年で3割近く増えている。
解約率は月0.33%にとどまる。100社が使っても、1年でやめるのは4社ほどという計算だ。
一度導入して取引先に送り先を案内し直すと、簡単には元のやり方に戻せない。
人を増やすペースよりも、毎月積み上がる売上の伸びが上回ったことで、利益が出る体質に変わった。
AIと人の分担が単価を上げる

契約数だけでなく、1契約あたりの月の売上も23万9,000円と少し上がっている。年間に直すと、毎年入ってくる売上が157億3,200万円ある状態だ。
料金プランを3つに分け直したことが影響している。
一番下のプランは請求書のデータ化のみだが、中位・上位のプランにはAIと自動化の機能が含まれる。
AIの機能を上位プランの価値とすることで、単価を引き上げているのだ。
では、届いた請求書の処理において、どこまでをAIが担い、どこから人が見ているのだろうか。
照合と起票の自動化
受け取った請求書に対する機能として、AI自動照合、AI自動起票、自動承認の3つが提供されている。
AI自動照合は、請求書と納品・検収の記録を明細の1行ずつまで突き合わせる機能だ。
10箱注文して9箱しか届いていないのに、請求書は10箱分になっている。そうしたズレを見つける作業を自動化する。
2025年11月から提供されており、タイでニトリの店舗を運営する会社では、この機能によって年間約400時間の業務削減につながったという。
AI自動起票は2026年6月から提供されている。
**勘定科目**(通信費や消耗品費などの取引の分類)や税率を、担当者が普段処理している判断からAIが学んで自動で入力する。
そして9月からは、決めておいた条件に合う定型の請求書であれば、人が見なくても自動で承認が通る機能が追加された。
条件に合わない項目だけが人に回ってくる形だ。
AIで片づくところはAIに任せ、間違えると困るところだけ人が見る。この分担が、データ化の精度を保ちながら処理の手間を減らしている。
中小企業への波及とインボイスネットワーク
こうした仕組みを、どのような規模の会社が使っているのだろうか。
規模別の売上を見ると、従業員100人から999人の中堅企業が48%を占める。1,000人以上の会社が27%、99人以下の会社が25%だ。
どの規模も1年前と比べて3割以上伸びているが、世の中の会社全体に対する普及率はまだ低い。
1,000人以上の会社で9.0%、100人から999人で4.2%、99人以下では0.1%にとどまる。
中小企業の請求書受け取りは、まだほとんどが紙とメールのままである。
この状況を変えるため、SansanはソフトバンクグループのSB C&Sと販売代理店契約を結んだ。
全国1万5,000社の販売パートナーを通じ、中小企業向けの専用プランを地方の会社にも提案していく構えだ。
送る側として巻き込まれる日
自社で導入していなくても、すでに仕組みの中に巻き込まれている会社は多い。
Bill Oneの有料・無料契約企業と、そこへ請求書を送っている企業を合わせると、約27.8万社にのぼる。
やりとりされる請求書の金額は、年に直すと約75兆円だ。
大きな取引先がサービスを導入すれば、請求書を送る側の会社も、その経路で送るように案内される。
使っている自覚がなくても、ネットワークの中にいる会社がたくさんあるということだ。
クラウド請求書受領サービスの市場で、Bill Oneは2024年の売上シェア49.0%を占め、4年連続で1位となっている。
市場自体も2029年には740億円まで伸びる見通しだ。
取引先から指定されたとき、そのやり方に合わせられるかが問われる。
紙で送っている会社は、PDFで送れるようにしておくだけでも、受け取る側の手間はずいぶん変わってくる。
まとめ

- Bill Oneは前の期に16億円の赤字だったが、この四半期で黒字になった。売上は40億6,700万円で前年同期比プラス34.4%、解約率は月0.33%にとどまる。
- 黒字の理由は、広告宣伝費を3割減らしたことと、AIと自動化の機能を上のプランに入れて単価を上げたことにある。
- データ化はAIと人の組み合わせで行われ、照合、起票、承認までAIで自動化される。中小企業での利用はまだ0.1%だが、インボイスネットワークを通じて広がりつつある。
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