「経理を採用したいのに応募が集まらない」「経験者がいても条件が合わない」「採用できる気がしない」など、経理採用で行き詰まる場面は珍しくありません。特に中小企業では、業務の幅が広くなりやすい分、採用の難しさを強く感じることがあります。
ただ、採用がうまくいかない理由は人材不足だけとは限りません。業務の切り分け方や求人票の伝え方、体制の作り方を見直すことで、採用の現実性が上がり、外部活用も含めた回し方が見えてきます。
この記事では、経理の採用が難しい背景と企業側のつまずきやすいポイントを押さえたうえで、採用設計の考え方や、難しい場合の対策を具体的に紹介します。採用と体制づくりを同時に進めたい方は、ぜひ参考にしてください。
経理の採用が難しいときの結論と優先順位

経理の採用が難しいと感じたときは、「理想の1人」を探し続けるより、業務を分けて体制を組み立てる方が前に進みやすくなります。採用で担う範囲と外部活用で補う範囲を決めることが、現実的な解決につながります。まずは次の優先順位で考えると迷いにくいです。
- 採用要件を業務単位で分解する
- 内製と外部活用の役割を決める
- 体制を整えて求人票と選考に反映する
上記の考え方を順番に押さえることで、採用活動の軸がぶれにくくなります。
採用要件の分解という発想
経理採用が難しくなりやすい理由の1つは、「経理全般」を1人に求めてしまう点にあります。月次、年次決算、請求支払、債権債務管理、税務対応、資金繰り資料までを一括で任せる前提だと、当てはまる人材は限られてしまいます。
そこで効果的なのが、業務を役割単位で分解する考え方です。例えば、請求書発行や支払処理などの定型業務は切り出しやすく、育成前提の採用でも進めやすくなります。一方、決算や税務判断のように専門性が高い領域は、外部の知見を借りる選択肢も現実的です。業務を分けて考えることで採用対象が広がり、無理のない体制を検討しやすくなります。
採用と外部活用の役割分担
経理は全てを内製しなければならない、というものではありません。採用が難しい状況では、採用と外部活用を対立で捉えるより、役割分担として設計する方がうまく回ります。
判断するポイントは「社内に残すべき判断」と「外部に任せやすい実務」を分けることです。例えば、社内ルールに沿った処理の判断や、部門との調整が必要な業務は内製向きです。一方で、決算の締めや税務の論点整理などは、成果物と期限を定義しやすいため外部とも相性があります。業務範囲と成果物の形を先に決めておくと、品質のブレを抑えやすくなり、担当者の負担も軽くなります。採用と外部活用を組み合わせることで、採用難の影響を受けにくい体制になりやすいです。
体制整備を先に進める重要性
採用活動が長引く企業ほど、体制が曖昧なまま募集を出してしまっているケースがあります。業務フローや担当範囲が固まっていないと、求人票の内容も抽象的になり、応募者に仕事内容が伝わりにくくなります。その結果として応募が集まりにくくなり、採用後も「思っていたのと違う」が起きやすくなります。
体制整備を先に進めると、募集要件とサポート範囲を具体的に書けるため、応募者の不安を減らしやすくなります。例えば、繁忙期の業務量、決裁フロー、使用している会計ソフト、周辺業務の担当有無などが見えるだけでも、応募者は働く姿を想像しやすくなります。採用の成功は入社で終わりではないため、定着まで見据えて体制を整えることが重要になります。
経理の採用が難しいと言われる背景
経理採用の難しさは、個別企業の事情だけでなく、市場環境と経理に求められる役割の変化も影響しています。背景を押さえておくと、条件設計や伝え方を現実に合わせやすくなり、採用の打ち手も選びやすくなります。まずは「なぜ難しいと感じやすいのか」を整理していきます。
経理人材市場の需給バランス
経理は多くの企業に欠かせない職種のため、経験者の採用が難しいと感じる企業は増えています。特に決算や税務に触れてきた人材はニーズが高く、複数社から声がかかることも珍しくありません。そのため、給与などの条件だけで勝負しようとすると、中小企業ほど不利になりやすい傾向があります。
ここで大事なのは、市場の構造に合わせて戦い方を変えることです。例えば「何でもできる人」を探すのではなく、担ってほしい業務範囲を狭めて母集団を広げる、リモートや時差出勤など働き方の選択肢を用意する、といった工夫が考えられます。採用市場が売り手寄りのときほど、要件の分解と訴求の具体化が効いてきます。
経理業務に求められる役割の拡大
以前は記帳や決算対応が中心だった経理も、近年は経営管理や業務改善への関与が期待される場面が増えています。数字をまとめるだけでなく、管理資料の作成や部門との調整、仕組みの見直しまで含めて求められると、必要なスキルの幅が広がります。その結果、企業側が期待する役割と、応募者が想像する仕事内容にズレが起きやすくなります。
例えば「経理全般」と書いてある求人でも、実態が“管理会計寄り”だと感じた瞬間に、応募者は敬遠することがあります。業務の範囲と期待値を具体的に示すことで、役割のズレを減らし、ミスマッチを防ぎやすくなります。採用の難しさは「求める役割が増えた」こととセットで捉えるのがポイントです。
企業規模による採用条件の差
企業規模が違うと、経理の働き方も大きく変わります。大企業は分業が進みやすい一方で、中小企業は少人数で幅広い業務を担うケースが多くなります。この違いが、採用条件の厳しさとして表れやすいです。例えば、1人経理に近い体制だと、引き継ぎの不安や業務負荷の懸念が応募の壁になります。
そこで、業務の見える化とサポート範囲の提示が効果的です。決算期に誰が支援するのか、税務は会計事務所とどう分担するのか、請求や支払の承認はどの部門が関与するのか。こうした情報があると、応募者は安心して検討しやすくなります。企業規模の特性を踏まえて条件と伝え方を整えることが重要です。
経理の採用が難しくなる企業側の要因
採用難は市場の問題だけでなく、企業側の設計や伝え方が影響していることもあります。特に「業務の実態が見えない」「条件が高すぎる」「体制が曖昧」の3点は、応募が集まりにくくなる典型です。ここを直すだけでも、採用の前進につながる場合があります。
業務内容と期待値の曖昧さ
経理の求人で多いのが、業務内容と期待値が曖昧なまま募集しているケースです。「経理全般」「幅広い業務」だけでは、業務量や難易度が伝わりません。応募者は負荷を想像できないため、不安から応募を控えやすくなります。さらに、企業側が想定する役割と応募者の理解がズレると、採用後のミスマッチにもつながります。例えば、日常経理中心のつもりで入社したのに、月次の締めや改善まで求められると、ギャップが大きくなります。
求人票には、担当範囲(請求支払、仕訳、月次、決算、税務対応など)と、期待するレベル(サポート有無、最終判断者の所在)を書き分けると伝わりやすいです。具体化するほど応募者は検討しやすくなり、結果として選考も進めやすくなります。
採用要件の過剰設定
採用要件を高くしすぎると、候補者が一気に減ってしまいます。特に「経験年数も資格も業界経験も必須」といった設定は、採用難を自ら強める形になりやすいです。大事なのは、本当に必要な要件と、あれば望ましい要件を分けて考えることです。例えば、決算を自走してほしいのか、まずは日常業務の安定運用を任せたいのかで、必要な経験は変わります。
業務を分解して、入社後に習得できる部分を「歓迎条件」に寄せると、応募のハードルを下げやすくなります。要件を下げることは質を落とすことではなく、役割設計を現実に合わせることでもあります。結果として採用の母集団が広がり、ミスマッチも抑えやすくなります。
経理体制と業務分担の未整理
体制が整理されていない状態で採用を進めると、応募者は働くイメージを描きにくくなります。誰が何を担当し、困ったときに誰へ相談できるのかが見えないと、不安が先に立ちやすいです。特に属人化が進んでいる場合、引き継ぎが不透明になりがちで、応募者は「自分だけが抱えるのでは」と感じてしまいます。
採用前に、担当範囲、決裁フロー、繁忙期の支援体制、会計事務所との分担などを整理し、求人票と面接で共有できる状態にしておくと安心感が出ます。体制を整えることで採用後の定着にもつながり、採用のやり直しを減らしやすくなります。採用活動と並行して体制を見直すことが、遠回りに見えて近道になる場合があります。
優秀な経理人材を採用するための採用設計

経理採用は「条件を上げる」だけでは限界があります。人物像を明確にし、求人票で業務の実態を伝え、チャネルを目的に合わせて使い分けることで、採用の確度が上がりやすくなります。採用活動を設計し直す感覚で進めるのがポイントです。
求める経理人材像の明確化
最初にやるべきは、自社に必要な経理人材像を具体化することです。経験年数や資格だけでなく、「どの業務を、どのレベルで、どの範囲まで任せたいか」を言語化します。例えば、既存の運用を安定させたいのか、改善を進めたいのかで、求める人物像は変わります。人物像が曖昧だと、面接の評価軸がぶれて、選考のやり直しやミスマッチが起きやすくなります。
逆に、担当範囲と期待値が明確になると、採用基準が揃い、判断が早くなります。さらに、採用後のオンボーディング設計にもつながるため、定着の面でも効果があります。「誰を採るか」ではなく「何を任せたいか」を起点に、人材像を固めることが重要になります。
求人票の訴求ポイント設計
求人票は条件を並べるだけでなく、応募者に働くイメージを持ってもらうための情報が必要です。業務内容は具体的に書き、担当範囲とサポート範囲を分けて示すと伝わりやすくなります。例えば、月次の締めは誰が最終チェックするのか、決算期はどんな支援があるのか、税務は会計事務所とどう分担しているのか。
こうした情報があると、応募者は負荷を想像しやすくなり、安心して応募しやすくなります。加えて、会計ソフトや周辺ツール、リモート可否、残業の見込みなども、判断材料として有効です。抽象的な言い回しを減らして具体情報を増やすことで、応募の質が揃いやすくなり、ミスマッチも抑えやすくなります。
採用チャネル別の使い分け
経理採用は、チャネルの選び方で成果が変わりやすいです。求人媒体、エージェント、紹介、派遣など、それぞれ得意分野が違うため、目的に合わせて組み合わせることが大切になります。
例えば、即戦力を求める場合はエージェントが合いやすく、条件に合う候補者と出会える確率が上がりやすいです。一方で、育成前提なら求人媒体や紹介で幅を持たせる方法もあります。さらに、「正社員採用が前提」という縛りを外し、一定期間は派遣や業務委託で補完する選択肢も現実的です。
目的に応じてチャネルを使い分けると、母集団の質が揃いやすくなり、結果として採用効率も上がりやすくなります。
採用のミスマッチを減らす選考の工夫
経理採用では、スキルの見極めと同じくらい「期待値のすり合わせ」が重要です。選考時に確認すべきポイントを決め、伝えるべき情報を先に出しておくことで、入社後のギャップを減らしやすくなります。ここは少し手間をかける価値があります。
- 実務スキルの確認ポイントを決める
- 業務の進め方が見える質問を用意する
- 大変な点も含めて事前共有する
実務スキルの確認ポイント
経理の実務スキルは、職務経歴書だけでは判断しにくいことがあります。そこで有効なのが、過去に担当していた業務範囲と、そのときの進め方を具体的に聞くことです。例えば、月次の締めをどの順序で進めるか、どの資料を作っていたか、イレギュラーが起きたときにどう対応したか、などです。
こうした質問は、経験の深さが見えやすくなります。可能であれば、短時間で終わる簡単な課題を使う方法もありますが、目的と評価基準を明確にし、応募者の負担が過度にならない範囲に留めることが大切です。個人情報や機密情報を含む資料は使わないなど、運用面の配慮も欠かせません。形式的な確認に寄せすぎず、実務に即した形で見極めると判断しやすくなります。
見極めやすい質問例
スキルだけでなく、実務の進め方や姿勢を確認できる質問を用意しておくと、相性が見えやすくなります。例えば、「締め切りが重なったとき、優先順位はどう付けますか」「過去に困ったミスは何で、どう再発防止しましたか」「他部署との調整で工夫したことはありますか」などです。
こうした質問は、単なる知識よりも現場での動き方が伝わりやすいです。加えて、業務改善の経験を聞く場合は、派手な実績を求めるより、小さな改善でも再現性のある話かどうかを見た方が判断しやすくなります。質問は「正解探し」ではなく「働き方のすり合わせ」だと捉えると、双方にとって納得感が高まります。
入社後ギャップの予防線
入社後のギャップを減らすためには、良い点だけでなく大変な点も含めて共有する姿勢が重要です。例えば、決算期の忙しさ、締めのタイミング、社内の決裁フロー、イレギュラー対応の頻度など、現実に近い情報を伝えると、応募者は覚悟を持って判断しやすくなります。
伝えることで応募が減るのでは、と心配になるかもしれませんが、後からズレが発覚する方がダメージは大きくなりがちです。期待値のすり合わせを丁寧に行うことで、入社後の立ち上がりがスムーズになり、結果として定着にもつながりやすくなります。採用は「入社させること」ではなく「活躍してもらうこと」まで含めて考えるのが大切です。
経理の採用が難しい場合の現実的な対策
採用が思うように進まないときでも、経理業務は止められません。そこで重要になるのが、業務の切り分け、外部活用、属人化の解消をセットで進めることです。採用が決まるまでの“つなぎ”ではなく、採用難でも回る体制にしておくと安心です。
- 内製する業務と切り出す業務を分ける
- 外部活用で専門領域の負荷を下げる
- 業務フローを整えて引き継ぎやすくする
これらを組み合わせることで、採用が難しい状況でも運用の安定につながります。
業務の切り分けと内製範囲の整理
経理業務を全て内製しようとすると、採用要件が上がり、採用の難易度も高くなりやすいです。まずは業務を洗い出し、内製すべき範囲を現実的に決めるところから始めると進めやすくなります。
分け方の基本は「定型で回しやすい業務」と「専門性や判断が必要な業務」です。例えば、請求書発行や支払処理、仕訳入力などは手順化しやすく、体制を作れば属人化も減らしやすいです。
一方で、決算の論点整理や税務判断などは、経験の差が結果に出やすいため外部の知見を活用する選択肢があります。切り分けができると、採用する人材に求める範囲が明確になり、採用対象も広がりやすくなります。
外部サービス活用による体制補完
採用が難しい状況では、外部サービスを活用して体制を補完する方法も有効です。業務委託やアウトソーシングを使うと、決算や記帳などの一部を任せられるため、社内の負担を下げやすくなります。ただし「任せれば安心」と考えるのではなく、業務範囲と成果物の定義を先に決めることが重要です。
例えば、月次の締めでどの資料をいつまでに作るのか、仕訳のルールは誰が決めるのか、質問対応の窓口はどうするのか、などです。こうした設計があると、品質のブレを抑えやすくなります。また、繁忙期だけ依頼するなど柔軟に運用できる点もメリットです。内製と外部活用を組み合わせることで、採用難の影響を受けにくい体制になりやすくなります。
属人化を防ぐ業務フロー整備
採用や外部活用と並行して進めたいのが、業務フローの整備です。属人化が強いと、特定の人に業務が集中し、退職や休職で一気に回らなくなるリスクがあります。そこで、手順を文書化し、チェックポイントを明確にしておくことが重要になります。例えば、請求書の受領から支払までの流れ、承認のタイミング、締め作業の手順、よくある例外対応などを残しておくと、引き継ぎがしやすくなります。
加えて、業務の見える化が進むことで、採用時にも仕事内容を具体的に伝えやすくなります。体制が整うと、未経験者や経験の浅い人材でも立ち上がりやすくなるため、採用の選択肢が広がる点もメリットです。属人化の解消は、採用難対策としても効果が出やすい取り組みです。
経理採用に関するよくある質問
経理採用は「応募が集まらない」「経験者が見つからない」など、採用担当者にとって悩みが尽きないテーマです。実務経験や専門性が重視されやすい一方で、育成や外部活用といった選択肢もあり、判断に迷うケースも少なくありません。
ここでは、経理採用が難しいと感じられる理由や、未経験採用・外注の考え方など、現場でよく聞かれる疑問をQ&A形式で整理します。採用方針を考えるヒントとしてご覧ください。
経理はなぜ他職種より採用が難しいのですか?
経理は専門性が求められ、実務経験が重視されやすい職種です。また、企業ごとに業務の進め方やルールが違うため、経験がある人でも「すぐに同じように動ける」とは限りません。そのため、即戦力を求めるほど候補者が限られ、採用が難しいと感じやすくなります。
加えて、決算や税務に触れてきた人材はニーズが高い傾向があるため、条件だけで比較されると不利になる場合があります。業務範囲を分解し、仕事内容とサポート範囲を具体的に伝えることで、採用の難しさを和らげやすくなります。
未経験者を経理として採用するのは現実的ですか?
業務を分解し、育成前提で体制を組むなら現実的です。例えば、請求書の処理や支払準備などの定型業務から任せ、段階的に担当範囲を広げていく方法があります。
ただし、教育担当が不在だったり、手順が文書化されていなかったりすると、未経験者の採用は負担が増えやすいです。先に業務フローを整え、チェック体制を用意しておくと、育成が進めやすくなります。採用と同時に体制整備を行うことで、未経験者でも立ち上がりやすい環境になりやすいです。
経理を採用せず外部に任せても問題ありませんか?
業務内容によっては十分成り立ちます。特に記帳や決算対応など、成果物の形を定義しやすい業務は外部活用と相性があります。ただし、社内側に「判断と連携」の役割が残らないと、外部に任せたのに回らない状態になりやすい点には注意が必要です。
例えば、社内ルールの決定、例外対応の判断、部門との調整などは社内で担った方がスムーズです。外部に任せる範囲と、社内で残す範囲を決めておくことで、無理なく運用しやすくなります。
まとめ | 経理の採用が難しい時代に求められる体制設計
経理の採用が難しい背景には、市場環境の変化や経理に求められる役割の広がりがあります。そのため、理想の人材を探し続けるだけでは、採用が長期化しやすくなります。業務を分解し、内製と外部活用を組み合わせて体制を作ることで、採用の現実性が上がり、運用も安定しやすくなります。求人票では業務範囲とサポート範囲を具体的に伝え、選考では期待値のすり合わせを丁寧に行うことが重要です。
管理のプロでは、経理業務の棚卸しから、役割分担の設計、外部活用の進め方まで一貫してサポートしています。採用要件の切り方や求人票に落とし込むポイントも含め、状況に合わせて「採用で担う範囲」と「外部で補う範囲」を具体化できるため、採用活動と体制づくりを同時に前へ進めやすくなります。経理の採用が難しい、体制が属人化して回らない、外部活用を検討したいといったお困りの際は、ぜひ一度ご相談ください。
