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この記事の内容は、図解スライド資料「システム導入の稟議書テンプレート+ROI試算シート」として無料配布しています。

決裁者が探している3つの情報
現場の業務を楽にするためのシステム導入を提案したのに、決裁が下りない。そんな経験があるかもしれない。
提案のタイミングが悪かったのだろうか。選んだツールが自社に合っていなかったのだろうか。そう考えたくなる。
決算前や繁忙期など、会社の資金や現場の余力を無視したタイミングの提案は、確かに通りにくい。しかし、稟議が通らない本当の理由は、ツールの性能やタイミングだけではない。
決裁を下すために必要な情報が揃っていないからだ。
現場の担当者は、システムを入れるとどれだけ便利になるかを伝えようとする。しかし、決裁者は感想では判断できない。
決裁者が細かい質問をしてくるのは、提案に反対しているからではない。判断を下すための情報が足りないというサインである。
では、決裁者は何を知りたがっているのだろうか。機能の豊富さではない。お金とリスクと責任である。
いくらかけて、いつ元が取れるのかという回収の計画。失敗したときの最悪の損失はどれくらいで、どうやってやめるのかという撤退の条件。そして、導入後の運用と効果の報告は誰が責任を持つのかという体制。
この3つの問いに答えることが、稟議書の役割になる。
稟議書を構成する7つの項目

決裁者の問いに答えるためには、情報を並べる順番がある。課題から始まり、解決策、数字、そして懸念を潰すという流れである。
具体的には、背景と課題、解決策、費用、効果、リスクと対策、代替案比較、スケジュールの7項目で構成する。
背景と課題には、現場が大変だという感想ではなく、月に何時間かかっているか、ミスが何回発生しているかという実測値を書く。
解決策には、ツールの機能一覧ではなく、業務の進め方がどう変わるかを記す。
比較には現状維持を含める
1案だけの起案は、なぜこのツールなのか、他は検討したのかという疑問を生み、決裁の手前で止まってしまう。そのため代替案との比較が必要になる。
ここで本命と対抗のツールだけを並べてしまうことが多い。必ず、何もしない案を含める。
何もしない案を入れるのには理由がある。現状維持のままでも、人件費やミスの対応、属人化によるコストが発生し続けていることを見せるためだ。
費用は3年総額で提示する
費用を月額の利用料だけで見せてしまうことも珍しくない。
決裁者は総額で投資を判断する。あとから初期費用やデータ移行にかかる社内工数などの隠れコストが判明すると、提案全体の信頼が失われる。
初期費用、月額利用料、そして教育や移行にかかる社内の人件費まで含め、3年間の総額で提示する。
撤退条件をあらかじめ決める
移行の手間や失敗時のリスクに触れない起案は、かえって検討が浅いと見なされる。
リスクは隠さずに先に出す。何ヶ月で効果が出なければ解約するという撤退条件を明記しておく。あらかじめ引き際が設定されていることが、決裁者の安心につながる。
スケジュールも、全社一斉導入ではなく、一つの部門から小さく始める計画にする。検証期間を設けることで、初期のリスクを下げる。
投資対効果の測り方
稟議の中心となるのは、投資対効果の数字である。
削減できる時間や金額、そして投資の回収期間を計算しなければならない。
計算の構造は、大きく4つのブロックに分かれる。業務時間の削減効果、エラーやリスクの削減効果、導入にかかるコスト、そして月次純効果から割り出す回収期間である。
この数字は、作るものではなく測るものである。
実測値から削減時間を計算する
対象となる業務の現状の作業時間を測る。全社調査を行う必要はない。対象業務について、1週間だけ15分単位の記録をつければ月換算の基準値になる。
そこから導入後の時間を引いて、削減時間を出す。導入後の時間は、ベンダーが提示する削減率を鵜呑みにせず、無料トライアルに自社のデータを流して実測する。
算出した削減時間に、時給換算した人件費単価をかけて効果額を出す。
人件費単価は、月給を月間労働時間で割った時給換算が基本になる。社会保険料などの会社負担分まで含めるかは社内のルールに合わせる。
決裁者は数字の甘さを見抜く。計算の根拠となる単価の出し方は備考欄に明記し、保守的な予測と上振れしたときの予測を併記する。
数字にできない効果を分離する
エラーの削減については、ミスの件数に1件あたりの手戻り時間をかけて金額に換算する。
しかし、システム導入の効果には、属人化の解消や監査への対応、経営数字の見える化など、金額にしにくいものもある。
これらを無理に金額換算すると、数字全体の信頼を落とす。定量的な効果と定性的な効果は分離して扱う。
稟議の土台はあくまで定量的な効果による回収期間である。定性的な効果は、その上積みとして位置づける。
定性的な効果は、担当者が退職したときに業務が止まるリスクが減るなど、リスクが下がる話として書くと決裁者に伝わりやすい。
これは、比較検討に入れた何もしない案の裏返しでもある。現状維持のまま放置するリスクを、定性効果として解消する構成にする。
導入後の報告を約束する

稟議が通ってシステムを導入したら終わりではない。
稟議書の中に、数ヶ月後に効果を報告するという約束を明記しておく。この約束自体が信頼を生み、決裁を下しやすくする。
報告の場では、導入前に測った基準値と、導入後の実績値を同じ物差しで比較する。だからこそ、事前の実測が欠かせない。
もし目標に届かなかった場合は、定着不足なのか設定の問題なのか、あるいは事前の見積もりが過大だったのかを探る。原因と対策をセットで報告する。隠したり報告しなかったりするのが一番の悪手である。
投資をして、効果を回収し、次の投資につなげる。この実績が積み重なると、会社の中に文化ができ、2件目以降の稟議はより速く通るようになる。
投資提案としてのシステム導入
稟議はお願いではなく、会社への投資提案である。
費用対効果の数字と撤退条件が揃っていれば、決裁者は判断を下すことができる。
提案の骨格となる稟議書の項目設計と、計算式が組み込まれた投資対効果の試算シートは、ホワイトペーパーとしてまとめている。
必要な情報を埋めるだけで提案の形が整うようになっているので、手元に置いて活用してほしい。
ツールの選定や事前の試算に行き詰まったときは、業務の棚卸しや可視化から外部の支援を入れることも選択肢になる。第三者による試算は、そのまま稟議の根拠資料として機能する。
