
9月2日と3日、生成AIの最上位モデルが立て続けに発表されました。
アンソロピックの<strong>Claude Fable 5.1</strong>(クロード・フェイブル 5.1)と、オープンAIの<strong>GPT-6 Astra</strong>(アストラ)です。
どちらも、単に処理が速くなったという話ではありません。前のモデルでは途切れていた長い作業を、最後までやり切る力がつきました。
これは、管理職とバックオフィスの仕事に直接ぶつかる変化です。
2日で出た2つの最上位モデル
既存の環境のまま乗り換えられる
9月2日、アンソロピックがClaude Fable 5.1を一般公開しました。同時に限定提供されたClaude Mythos 5.1とは、中身は同じで安全装置の水準が違うだけです。
Fable 5.1は、Claude APIやClaude Enterpriseだけでなく、AWSのBedrock、GoogleのAgent Platform、マイクロソフトのFoundryなど、幅広い環境で利用できます。
翌3日には、オープンAIがGPT-6 Astraを発表しました。
こちらはChatGPTの有料プラン(Plus、Pro、Business、Enterprise)に順次展開され、利用は既存のサブスクリプションの枠に含まれます。追加で使う分はクレジットを買う形です。OpenAIのAPIはもちろん、AzureやAWSのBedrockでも提供されます。
実務において重要なのは、すでに契約しているクラウド環境のまま、新しいモデルに乗り換えられることです。情報システム部門に新しい契約を通す必要はありません。
ただし、Astraが学習している情報は2026年4月30日までです。それ以降の制度改正や新しい様式は知らないため、人が資料として渡す前提になります。
数字の伸びが示す「やり切る力」

初見への強さと、連続した作業の完遂
前のモデルから、数字はどれだけ動いたのでしょうか。
Fable 5.1で最も大きく動いたのは、コマンド操作を伴う科学系の作業を最後までやり切れるかを測る「Terminal-Bench-Science 0.1」です。前のFable 5の24.7%から52.6%へと、2倍以上に伸びました。
他にも、Terminal-Bench 4.0が42.0%から55.8%、OSWorld 2.0の厳しい条件で36.1%から41.7%、Humanity's Last Examがツールなしで57.8%から60.9%へと、軒並み向上しています。
Astraも同様です。初めて見る形式の問題に対し、その場で法則を見つけて解けるかを測る「ARC-AGI-3」が、7.8%から99.9%へと実質満点になりました。覚えている知識ではなく、初見への強さが桁違いに上がっています。
さらに、OSWorld 2.0が前のGPT-5.6 Solの65.7%から72.6%に、FrontierMath Tier 4も83.0%から97.6%へと伸びています。
ここで、異なる会社のベンチマークを横並びで比較しても意味はありません。ツールを使わせたかどうかなど、測り方の条件が違うからです。
見るべきは、それぞれのモデルが前のモデルからどう伸びたかです。
どちらの数字も、一問一答の上手さではなく、画面やコマンドを操作して手順の長い作業を最後までやり切る力が上がったことを示しています。
請求書を受け取って、内容を確認して、システムに入れて、一覧を更新する。この一続きの作業が、いままでは途中で切れていたのです。
APIがなくても画面があれば任せられる
実験ではなく機能になったコンピューター操作
この「やり切る力」は、実務で何を変えるのでしょうか。
AstraのAPIドキュメントを見ると、対応ツールの一覧に、<strong>computer_use</strong>(コンピューター操作)が正式に並んでいます。他にも、hosted_shell(ホステッドシェル)やapply_patch(アプライパッチ)、skills(スキルズ)、mcp、tool_searchといったツールが用意されています。
画面を操作する、コマンドを打つ、ファイルを直接書き換える。これらが実験的な試みではなく、公式の機能として提供されたのです。
公式の発表にも「コンピューターでできることは、Astraが代わりにやる」と書かれています。
バックオフィスの実務に置き換えると、影響の大きさがわかります。
請求書のポータルにログインして当月分をまとめて取ってくる。勤怠システムで打刻漏れの一覧を出して対象者に確認の連絡文を用意する。会計ソフトの画面に仕訳を入れていく。
これまでは、システム同士を連携するAPIがなければ諦めるしかなかった業務です。しかし今は、画面さえあればAIに任せられます。古いシステムを使っている会社ほど、この恩恵は大きいはずです。
考える深さと文脈の保持
もう一つの変化は、一度に扱える情報の量と深さです。
Astraは1回に受け取れる入力が92.2万トークン、出し切れる出力が12.8万トークンになりました。文脈の窓としては105万トークンを備えています。これは、就業規則と雇用契約と過去のやり取りを、まとめて一度に渡せる量です。これまでは分けて渡すしかなく、つながりが切れていた部分です。
さらに、考える深さを5段階(低・中・高・極高・最大)で指定できます。経費の科目判定のような定型業務は浅く、規程の改訂案のような判断が要る業務は深く、と使い分けられます。同じモデルでも、仕事の重さで指定を変えられるのです。
Fable 5.1も、複数の長時間タスクで文脈を保ち続けられるようになったと公式に謳っています。
30年前の探査機マゼランのレーダー画像から金星の地形図を作り直し、解像度を10〜20kmから2〜3kmに引き上げ、高さの精度も25%向上させた事例が紹介されています。他にも、GPUカーネルを最適化して7つのオープンソースのディープラーニングモデルを最大2.5倍速くしたり、タンパク質のバインダー設計で10倍高い親和性を達成したりと、途中で状況を見ながら方針を変える長い作業の成果が挙がっています。
また、ソフトウェアの脆弱性を発見するためにも使えるようになりました。ただし、エクスプロイトの開発には使わせないという安全装置が併記されています。
渡し方の設計がコストになる

長い入力の割増とキャッシュの値下げ
性能が上がれば、気になるのは価格です。
面白いことに、両社とも入力100万トークンあたり10ドル、出力100万トークンあたり50ドルで横並びです。Fable 5.1に至っては、前のFable 5と同額に据え置かれました。
しかし、使い方によって実際のコストは大きく変わります。
アンソロピックは、同じ資料を何度も読ませる際の「キャッシュの読み取り」価格を、100万トークンあたり1ドルから0.25ドルへと75%値下げしました。公式には、通常の使い方で約25%、エージェントを使う仕事だと最大45%コストが下がると書かれています。
規程やマニュアル、過去の議事録を毎回渡すような使い方なら、この値下げがそのまま金額に効いてきます。
一方で、Astraは27.2万トークンを超える入力に対して、入力が2倍、出力が1.5倍の割増料金を設定しています。
長く渡せば渡すほど良い、というわけにはいかないのです。
どの業務にどの資料が要るのかを整理し、必要な部分だけを切り出して渡せる会社と、とりあえずすべてを投げる会社とでは、同じ仕事でも支払う金額が変わってしまいます。
モデルが強くなるほど、渡し方の設計という、使う側の整理の差が金額に直結する段階に入ったのです。
まとめ
モデルが強くなるほど、渡し方の設計で差がつきます。明日から管理職とバックオフィスが取り組むべきは、次の3点です。
- 画面を操作する仕事が機能になったため、誰が承認して何を見て判断したかを残す「承認と記録の設計」を先に行う。
- 社内規程や業務マニュアルなど、繰り返し渡す資料を決める。キャッシュの値下げがそのままコスト削減につながる。
- 業務の棚卸しを行い、AIに渡す範囲を絞り込む。長い入力は割増料金になるため、整理の差がコストの差になる。
モデルは毎月進化しますが、自社の業務を整理し、何を渡すかを決めるのは人間の仕事であり、会社の資産になります。
「自社の業務のどこをAIに任せていいか分からない」「何を渡せばいいのか整理できていない」という場合は、業務の棚卸しと可視化から始めることをお勧めします。株式会社管理のプロでは、1日でAI化の可否を決める工程分解の実演ウェビナーなども開催していますので、ぜひご活用ください。
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