出力100万トークンで規程もマニュアルも一度に書ける|主要AIモデル総入れ替え

バックオフィスで「できなかったこと」が「できること」に変わる瞬間は、いつ訪れるのでしょうか。

新しいツールが導入されたとき、とは限りません。裏側で動いているAIモデルの世代が上がったときです。

実際、2024年9月下旬のわずか9日間のあいだに、主要なAIモデルが総入れ替えになりました。どれも前の世代より速く、そして安くなっています。モデルの性能を示す数字を追うと、バックオフィスの仕事がどう変わるのかが見えてきます。

9日間で出そろった新しいモデルたち

速さと安さの更新

9月22日から30日にかけて、Anthropic、OpenAI、Googleの主要3社が立て続けに新しいモデルを発表しました。

9月22日にAnthropicが「Claude Opus 5.5」、OpenAIが「GPT-6 Sol」と「Luna」を出しました。続く28日に「Claude Sonnet 5.5」、29日に「GPT-6.1 Sol」、そして30日にGoogleが「Gemini 4 Argon」を発表しています。

どのモデルも、前の世代より速く、安くなっています。Anthropicの発表によれば、Opus 5.5は前のOpus 5より30%速く、通常の設定で40%安くなりました。OpenAIのGPT-6 SolとLunaも、API(システム同士をつなぐ窓口)の価格がGPT-5.6より50%低いとされています。

出力100万トークンが意味するもの

出力100万トークンで規程もマニュアルも一度に書ける|主要AIモデル総入れ替えの解説スライド

「どれだけ読めるか」から「どれだけ書き出せるか」へ

なかでも異彩を放つのが、GoogleのGemini 4 Argonです。ソフトウェア開発や企業の知識労働に強いとされるこのモデルは、出力の上限が100万トークンに達しています。

100万トークンとは、日本語でおおよそ数十万字から100万字の規模になります。文庫本にして数冊分です。

これまで各社が競っていたのは、長い契約書や過去の議事録をまとめて渡すといった、入力の側でした。今回増えたのは、出力の側です。

分割と手直しの消滅

これまでは、長い文章の作成を頼むと途中で切れてしまっていました。就業規則をまるごと作り直す、あるいは300ページの業務マニュアルを一度に書き出すといったことはできなかったのです。

仕方なく章ごとに分けて頼むと、今度は人がつなぎ合わせる作業が残ります。第1章では「申請者」と書き、第5章では「申請する人」になっている。この整合を取る手直しに時間がかかっていたわけです。

一度に書き出せるなら、その手直しが要らなくなります。用語集を先に渡して、全体を通して同じ言葉で書かせることもできます。社内で「取引先」と呼ぶのか「お客さま」と呼ぶのかを揃えるだけでも、読み手の負担は大きく減るはずです。

値段が下がると仕事の頼み方が変わる

読み直しのコストが95%引きになる

性能が上がり、価格が下がる。すると、仕事の頼み方そのものが変わります。

GPT-6.1 Solは、上位モデルに近い性能を持ちながら、料金は5分の1だと発表されています。さらに、一度使った入力を再利用する場合は95%引きになります。

同じ資料を何度も読ませる使い方が、極端に安くなるということです。バックオフィスの仕事は、まさにこれに当てはまります。同じ就業規則、同じ勘定科目表、同じ取引先リストを、請求書を1件処理するたびに読ませている。この読み直しの費用が、ほぼ無料になります。

丸ごと渡したほうが安くなる逆転

ClaudeのOpus 5.5も、読み込みの再利用が60%安くなっています。Sonnet 5.5についても、前のモデルより30%速く30%安いと報じられています。

これまでは、安く済ませるために人が先に関係しそうな資料だけを絞ってからAIに渡すのが基本でした。しかしこれからは、まるごと渡してAIに選ばせたほうが安くなる場面が出てきます。

人が資料を選ぶ時間のほうが高くつくという逆転が、すでに起きているのです。

常に動いているAIと、手元で動くAI

出力100万トークンで規程もマニュアルも一度に書ける|主要AIモデル総入れ替えの解説スライド

問いかけを待たないエージェント

9月29日のOpenAIの発表では、「dots」と呼ばれる常時稼働のエージェントも登場しました。

1つ1つのdotsが自分専用のクラウド上のコンピューターとブラウザを持ち、4千を超えるアプリにつなげられます。動かしているのはGPT-6 Astraです。

これまでのチャットとの違いは、こちらが聞いたときだけ答えるのではなく、人がいない間も作業を進めている点にあります。Slackやメールを定期的に見に行き、放置されている依頼を拾って次にやることを教えてくれます。

バックオフィスであれば、届いた問い合わせメールの仕分けや、経費申請の規程チェック、請求書と契約の突き合わせを定期的に行い、人に判断してもらうものだけを出す使い方が考えられます。

もちろん、この常時稼働の形が正解かどうかは、まだ決まっていません。公開から数日で数百万が稼働している一方で、途中に仕組みが挟まりすぎていて自分で直接モデルに話しかけたい、という批判も出ています。

分化するモデルの行方

モデルの進化は、2つの方向に分かれつつあります。

1つは、手元で動くモデルです。Googleは「Gemma 4」と処理を軽くする技術「LiteRT」を組み合わせ、完全にオフライン(インターネットに接続しない状態)で動かせる環境を発表しました。利用料はゼロで、データは外に出ず、通信が切れても動きます。人事評価や未公表の決算数字など、そもそも社外に出せない情報を扱う会社には大きな選択肢となります。

もう1つは、一般には公開されないモデルです。先ほどのGemini 4 Argonは、安全上の懸念から限られた試験利用者にだけ提供されており、一般公開は見送られています。

いちばん強いモデルは企業向けに限定して提供され、手元で動く軽いモデルは誰でも使える形で提供される。この分化が進んでいます。

管理部としては、いま自社が使っているサービスがどちらの系統のモデルで動いているかを知っておく必要があります。使っているサービスの提供元に、裏側でどのモデルを使っているかと、入力した情報が学習に使われるかを聞く。答えられない会社なら、社外に出せない情報は渡さない、という判断になります。

まとめ

自社が使っているサービスの裏側のモデルが、この2週間で入れ替わっているかどうか。まずはそこを確かめるところからです。性能の向上と価格の低下は、単なる効率化にとどまらず、業務の設計そのものを変えていきます。今回の要点は以下の通りです。

  • 9月下旬の9日間で主要なAIモデルが総入れ替えとなり、どれも前の世代より速く、安くなった。
  • 出力の上限が100万トークンに達したことで、規程やマニュアルを分割せずに一度に書き出せるようになり、人がつなぎ合わせる作業が減る。
  • 入力の再利用が95%引きになるなど読み直しの費用が下がり、人が資料を絞るより丸ごと渡したほうが安くなる場面が出てくる。
  • 強いモデルの限定公開と、手元で動くオフラインモデルへの分化が進んでおり、自社が扱う情報の性質によって使い分けが求められる。

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