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この記事の内容は、図解スライド資料「従業員規模別 バックオフィス適正人数 早見表 ― 経理・労務・総務は何人が正解か」として無料配布しています。

経営陣と現場の認識はなぜ食い違うのか
経営者は、間接部門の人数が多いと感じている。 一方で現場は、人が足りないと訴え続けている。 この平行線は、多くの企業で珍しい光景ではないだろう。 双方が自社の状況を正しく把握できていないから、というわけではない。 比較する基準が存在しないからだ。
売上や営業人員の目標値と違い、バックオフィスの人数は社外に出ない数字である。 他社と比べる機会がほぼない。 その結果、「今いる人数」が暗黙の基準になる。 退職や産休、あるいは急激な事業成長といった事態が起きて初めて見直され、平時には検証されないまま固定化していく。
多いのか少ないのかを議論するには、まず規模帯別のベンチマークを出発点にする必要がある。 自社の従業員数に対して、経理、労務、総務は何人いるのが普通なのか。 この問いに答えを出さない限り、経営陣と現場の認識のズレは埋まらない。
適正人数を左右する5つの変数

では、従業員数が同じならバックオフィスの適正人数も同じになるのだろうか。 そう単純ではない。 従業員数は給与計算や入退社手続き、年末調整の件数に直結するため、人数の目安を出す主軸にはなる。 しかし、実際の業務負荷は他の要因によって大きく変動する。
取引量もその一つだ。 経理の負荷は売上額ではなく、仕訳数や請求書枚数といった件数で決まる。 事業の複雑さも影響する。 拠点数や事業部数、在庫の有無、グループ会社の存在は、そのまま管理の手間として跳ね返ってくる。 ツール化の度合いや、上場準備や監査対応といった品質要件も無視できない。
従業員数だけを頼りに体制を組むと、現場の悲鳴を見落とすことになる。 たとえば、同じ従業員50名の企業でも、単一事業で法人顧客が数社の企業と、複数事業を展開し個人向けの現金商売を扱う企業とでは、経理の仕訳件数が桁違いになる。 事業の複雑さは、見えない業務量としてバックオフィスにのしかかる。
また、SaaSが導入され自動化が進んでいる企業と、紙と印鑑に頼っている企業とでは、同じ業務量をこなすために必要な人数が変わる。 上場準備に入れば、内部統制や月次決算の早期化が求められ、品質要件が一気に跳ね上がる。 従業員数を軸にしつつ、これらの変数で自社の位置を補正して初めて、現実的な目安が見えてくる。
見かけの人数と実質的な業務量
自社の人数を数えるとき、単純に専任者の頭数を数えていないだろうか。 それでは正確な比較は成立しない。 兼任者は、その業務に使っている時間割合であるFTEで換算する必要がある。 専門用語のように響くかもしれないが、考え方は単純だ。 たとえば、経理と総務を半分ずつ担当しているなら、それぞれ0.5人として数える。
さらに、外部委託分も人数に含めなければならない。 税理士の記帳代行や社労士の給与計算、BPOの活用は、外部のFTEとして加算する。 経理は1人だから少数精鋭だと思っていても、実は社長や営業事務が月に数十時間ずつ業務を吸収しているケースがある。 見かけは1人でも、実質的には2.5人分の工数がかかっている状態だ。
内部のFTEと外部のFTEを合計した実質人数を揃えなければ、ベンチマークとの比較は意味を持たない。 よくある誤読は、社内の専任者だけを見て「うちは少ない人数で回せている」と錯覚することだ。 隠れた工数を洗い出し、外部の力も含めた総量で比較する。 これが適正人数を測るための絶対条件になる。
体制が崩れる3つのパターン

実質人数が目安の範囲内に収まっていれば、それで安心というわけでもない。 人数が適正でも、体制が実質的に機能しなくなるパターンがある。
- 属人化
- 兼任過多
- 成長への未追随
一つめは属人化である。 特定の1人しかできない業務が積み上がり、辞められない、休めない状態に陥る。 増員しても引き継げない。 属人化の症状は、担当者が休暇を取ったときに露呈する。 その人がいないと請求書が発行できない、給与計算が止まるといった事態が起きる。
二つめは兼任過多だ。 全員が少しずつ担当することで、誰の仕事量も見えなくなる。 責任の所在が曖昧になり、抜け漏れが生じる。 兼任過多は、良かれと思って助け合う文化の裏返しでもある。 誰かがやってくれるだろうという隙間が生まれ、結果として重要な手続きが漏れる。
三つめは成長への未追随である。 従業員が倍増したのにバックオフィスはそのままという事態は、残業の増加や月次処理の遅延で初めて発覚する。 成長への未追随は、売上を作るフロント部門の採用が優先される企業でよく見られる。 従業員が2倍になれば、入退社手続きも給与計算も2倍になる。 それなのに、バックオフィスの人数は据え置かれる。 限界を超えてから慌てて採用に動いても、引き継ぐ余裕すら残っていない。
これらに共通する根本原因は、業務量が計測されていないことにある。 感覚でしか語れないため、手が打てない。
少人数で回すための手順
体制の崩れに気づいたとき、すぐに人を増やすべきだろうか。 そうしたくなる気持ちはわかる。 ただ、増員は最後の選択肢である。 整理されていない業務をそのまま人に任せたり、ツール化したりすれば、かえって混乱を招く。
まず手をつけるべきは標準化だ。 手順書を作り、フォーマットを統一し、ルールを整備する。 属人化の解消が先である。 標準化を飛ばしてツールを入れると、既存の複雑な手順を無理やりシステムに合わせることになり、かえって手間が増える。
次にツールを導入する。 SaaSや自動化によって、転記や手作業を削減する。 それでも残る変動業務や繁忙期のピークは、外注に逃がす。 作業の手順が定まっていない業務を外部に投げても、確認のやり取りに追われるだけになる。 順番を間違えると、投資した分の効果は得られない。
標準化、ツール、外注。 これらを検討し尽くして、それでも足りない場合に初めて採用を考える。 社内の人員は判断業務に集中させる。
AI活用が変える適正人数の前提
近年では、必要人数の前提そのものが変わりつつある。 AI-OCRや自動仕訳、生成AIの普及により、定型業務の処理速度が劇的に向上しているからだ。 人を増やす以外の選択肢が、中小企業にとっても現実的なものになった。
AIを活用したBPOや、社内でのAIツール活用を前提とすれば、これまで複数人必要だった業務が少人数で回るようになる。 もちろん、AIで置き換わるのは作業の部分である。 判断や統制、例外対応を担う人員がゼロになるわけではない。 作業はAIと外部に任せ、社内の人間は数字を読み解いて経営に活かす。 これがこれからのバックオフィスの姿になる。
自社の現在地を測るために
どの打ち手を選ぶにしても、最初の一歩は同じだ。 誰が、何に、何時間使っているか。 業務の棚卸しと可視化からすべては始まる。
当社では、従業員規模帯と部門を掛け合わせた適正人数マトリクスや、自社の現在地を測れるセルフチェックシートをまとめたホワイトペーパー「従業員規模別 バックオフィス適正人数 早見表」を提供している。 自社の体制を客観的に見直し、次の一手を検討する際の参考にしてほしい。
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