
ExcelでCopilotに月次資料を作らせたいと感じることがあるだろう。指示の書き方さえ分かれば、面倒な集計から解放されるに違いない。
しかし、いきなり「どう指示するか」を考えるのは危ない。
重要なのは、作らせ方ではなく「どこまで触らせるか」である。マイクロソフト公式のラーニングパス「Microsoft Copilot で下書き、分析、プレゼンテーションを行う」を紐解くと、ExcelのCopilotを実務で安全に動かすための設計思想が見えてくる。
ブックを変更する量を誰が決めるか
ExcelでCopilotのウィンドウを開くと、上部にモードを選ぶ場所がある。「Chatのみ」「計画」「編集を許可」の3つだ。
公式の説明には「Copilotがブックを変更する量を制御できる」と書かれている。どこまで触らせるかを、使う側が選べるということだ。
「Chatのみ」は、ブックを変更しない。質問に対して答えと分析だけを返す。人に見せる前の下調べに向いており、元データが書き換わる心配がない。
「編集を許可」は、指示した結果になるようにCopilotが手順を実行する。表を作り、数式を入れ、書式を整えるところまでを一続きでやってくれる。自分用の集計を一から組むときに力を発揮する。
動作する前に計画を確認する
では、真ん中の「計画」は何をするのだろうか。
変更を加える前に、Copilotが構造化された計画を出してくる。公式には「Copilotは、動作する前に確認するための構造化されたプランを生成します」と書かれている。
やる前に、何をやるつもりかを見せてくれる。これは承認そのものである。人が承認してから動かすという運用が、Excelの中に機能として用意されている。確定した資料を触るときは、何をするか見てから通すこのモードが適している。
月次資料を実際に作らせる

モードとは別に、ExcelのCopilotが得意な領域を知っておく必要がある。
公式は用途を4つに分けている。すでに入っているデータの分析、複数ステップの作成や再構築、Pythonを使った予測や統計モデリング、そしてアナリストエージェントによる複数ファイルにまたがるデータの処理だ。
公式はこれを進行と考えており、探索と比較から始まり、Excelに取り込んで分析・整形し、最後に高度なモデリングや予測へと進む流れを示している。いきなり難しい機能から入らないということだ。
経理の月次集計や部門別の内訳、前月比の算出は、ほとんどが最初の「すでにあるデータの分析」で終わる。
複数ステップの処理を1文で頼む
実際に作らせる場面を考えてみよう。
「日付、カテゴリ、金額、メモの列を含む経費追跡テンプレートを作成し、累計を計算する数式を追加します」。これは「編集を許可」モードの代表例として公式に書かれているプロンプトだ。作るもの、入れる列、計算までを一度に指定している。
「このデータから四半期ごとのパフォーマンスサマリーテーブルを作成し、条件付き書式を適用して目標の80%未満の値にフラグを設定します」。表を作り、書式を付け、しきい値(基準となる値)で色を変える。これまでなら3回に分けていた作業が、1回の指示で完結する。
数式は説明を見てから入れる
数式の入れ方も変わっている。計算の中身を日本語で書くと、Copilotが数式を提案する。適用する前に「説明の表示」を選んでロジックを確認し、納得してから「列の挿入」で適用する。確認してから入れる流れが組まれている。
繰り返し使う計算は、カスタム関数として作れる。「地域全体の売上の加重平均を計算する関数を作成します」といった具合だ。
ピボットテーブルも同様である。「部門別と勘定科目別に、当月と前月の金額を集計するピボットテーブルを作成して、前月比が20%を超えた行にフラグを付けてください」。作る構造、見たい観点、目立たせる条件を言葉で説明するだけで、月次の下地ができあがる。
難しい機能は本当に必要か
では、残る2つの高度な機能はどういうときに使うのだろうか。
Pythonを使うExcelのCopilotは、予測、変数間の関係の分析、what-ifシナリオ、高度な視覚エフェクトなどに使われる。「今年の傾向に基づいて、今後6か月間の月間収益を予測します」といった指示を日本語で書くと、CopilotがPythonコードを生成して実行し、結果をブックに直接返す。
複数の変数が絡む質問では、送る前に「Think Deeper」を選ぶ。すると、先に詳細な分析計画を立ててから実行される。ここでも計画が先である。
ただし、公式は釘を刺している。「標準のグラフ、数式、ピボットテーブルで答えられるなら、通常そちらのほうが速くて解釈しやすい」。わざわざ難しい機能を使う必要はない。
まだExcelに入っていないデータを扱う
アナリストエージェントは、データがまだExcelに入っていない場合に使う。
拠点ごとに別々に上がってくる月次や、システムごとに書き出した明細など、複数のファイルにまたがるデータを扱う。複数のレポートを比較し、ファイル全体の傾向や外れ値を特定し、どのデータを結合または優先するかを決める。まとめる前に、どれを使うか決める段階で役立つ。
注意点として、アナリストエージェントはMicrosoft 365 Copilotのライセンスを持つ人が使える機能であり、可用性と構成は組織によって異なる。自社で使えるかは、情報システム部門に確認が要る。
経理が使うときに気をつけること

ここまでの仕様を踏まえ、経理が実務で使う際に気をつけるべき点を挙げる。
一つめは、確定した数字が入っているブックは、まず「Chatのみ」で開くことだ。
モードを選ばずに使うと、意図せずブックが書き換わる危険がある。決算の数字が入ったファイルならなおさらだ。触らせないことを既定にする。
二つめは、数式は「説明の表示」で中身を見てから入れることだ。
入った数式が何をしているか説明できない状態で、月次を締めるわけにはいかない。出す前に根拠を開くという原則は、AIを使っても変わらない。
承認の記録を操作の記録にする
三つめは、「計画」モードを社内の標準にすることだ。
何をするつもりかを出させて、人が見て、それから動かす。承認の記録が、そのまま操作の記録になる。AIに任せる範囲をその都度の気分で決めるのではなく、あらかじめ決めておく。これができている会社から、月次が軽くなっていく。
まとめ
作らせ方より、どこまで触らせるかを先に決める。
- ExcelのCopilotには「Chatのみ」「計画」「編集を許可」の3つのモードがあり、ブックを変更する量を自分で決められる。
- 経理の月次は「すでにあるデータの分析」でほとんどが足りる。
- 確定した数字は「Chatのみ」で開き、「計画」モードを標準にして承認のプロセスを組み込む。
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