Copilot に GPT-6 Astra が来た。でも変わるのは4つのうち2つだけ

9月4日、マイクロソフトが「CopilotでGPT-6 Astraが使えます」と発表しました。 Astraが入ったら、うちのCopilotもPCを自動で操作してくれるようになるのだろうか。 そう期待したくなるかもしれません。 しかし、結論から言えば、すべてのCopilotが明日から勝手に動き出すわけではありません。

Copilotに任せられる範囲は、モデルの賢さだけでは決まらないからです。 使う製品、つながる実行機能、触っていい範囲、そして承認の設計。 これらを分けないと、何も変わらないか、任せてはいけないものまで任せることになります。 経理・人事・総務の業務を題材に、手元のCopilotで今何が起きているのかを確認していきます。

自分が使っているCopilotはどれか

「Copilot」と呼ばれているものは、実は入口ごとに別物です。 大きく4つに分けられます。

  • **Copilot Chat**:質問、下書き、渡した資料の整理。
  • **WordやExcelの中のCopilot**:文書や表計算の作成補助。
  • **Copilot Cowork**:複数の工程をまとめて任せる。ファイルを作る、メールや会議を処理する、決まった時間に動かす。
  • **Copilot Studio**:自分でエージェントを組んで、設定したWindowsの画面を操作させる。

多くの会社で使われているのは、ChatとOfficeの中のCopilotでしょう。 しかし、今日の時点では、そこにAstraは来ていません。 9月4日の発表でAstraが展開されたのは、CoworkとStudioの2つだけです。 「全Copilot利用者がChatやOfficeでAstraを選べる」とは書かれていません。

つまり、自分がChatしか使っていなければ、何も変わりません。 Coworkは利用許可・課金設定・承認が必要であり、Studioは構築・実行環境・認証・権限・課金の設定が必要です。 多くの会社で、これらはまだ有効になっていません。 まずは「自社でCoworkが有効か」を情報システム部門に確認する。 これが最初の一手になります。 有効でなければ、ここから先は「これから開ける扉」の話になります。

Astraが入って何が変わったのか

Copilot に GPT-6 Astra が来た。でも変わるのは4つのうち2つだけの解説スライド

頭脳が賢くなったのだから、できることも一気に増えたはずだ。 そう思いたくなります。 しかし、ここで**頭脳**、**実行機能**、**許可**を分けて考える必要があります。

頭脳とは、何をするか判断するモデルのことです。 今回Astraが加わったのはここです。 一方、実行機能は、文書編集やAPI連携、ブラウザ操作といった手を動かす部分を指します。 許可は、どのデータや画面に触っていいかの範囲です。

実は、実行機能と許可はAstraが来る前から存在していました。 Coworkの複数工程の処理は6月16日の一般提供からあり、Studioの画面操作も5月に一般提供されています。 Astraが来て初めて仕事を実行できるようになったわけではありません。 既にある実行の基盤に、モデルの選択肢が一つ増えた。 これが今回の発表の正体です。

OpenAIの発表によれば、Astraはコンピューター操作、複数工程の仕事、テンプレートに沿った文書作成などが改善したとされています。 ただ、モデルの設定には注意が必要です。 Studioには、判断を担う主モデルと、画面操作ツール側のモデルの設定が別々にあります。 Astraを選んだからといって、画面操作も自動的にAstraになるとは限りません。 実機で2か所を別々に確認するしかありません。 「Astraが入った」イコール「うちのCopilotが突然PCを操作し始める」ではないのです。

請求書の突合を任せるとどこまで進むか

では、経理の請求書の突合を任せる場面を考えてみます。 これは3段階に分けられます。

第1段階:資料を渡す

請求書のPDF、発注台帳、検収一覧を渡し、不一致や不足資料、根拠箇所、確認メールの案を出させます。 これはCopilot Chatで今日からできる範囲です。 追加設定は要りません。 これだけでも、突合の下調べは相当楽になります。

第2段階:必要な情報を取りに行く

「発注台帳はSharePoint、検収一覧は先週のメール」と、Copilot自身が集めてきます。 ここはCoworkの領域です。 公式ガイドには、組織内の検索、文書作成、メール送信、会議設定が載っています。 ここからは、利用許可と課金設定、承認が必要になります。

第3段階:決めた範囲で登録する

突合が終わった結果を、会計システムの画面に入れます。 ここはCoworkのブラウザ操作か、Studioの画面操作の出番です。

公式ガイドによれば、自分のPCのEdgeの中で、ログイン済みのサイトを使って作業します。 管理者が有効にしていること、Web版のCoworkであること、Edgeを使っていること、同じ職場アカウントであることの4つが条件です。 PC全体を自由に操作するわけではありません。 既定では無効であり、管理者が有効にしないと動きません。 ログインや多要素認証、CAPTCHAが出たら人に操作を返すとも書かれています。

権限についても、自分が見られる範囲と同じで、それ以上でもそれ以下でもありません。 開けないファイルはCopilotにも見えないのと同じです。 なお、支払承認と振込は、この第3段階にも入れません。 金融取引は用途外と明記されているからです。

実際に企業で何が起きたのか

Copilot に GPT-6 Astra が来た。でも変わるのは4つのうち2つだけの解説スライド

任せた後の形を知るには、OpenAIが出しているLegora(レゴラ)の事例が参考になります。 法務向けのAI基盤の会社で、財務諸表の突合にAstraを使いました。 決算書案の数字を、試算表、連結明細、前年度の決算書と照合する作業です。

結果として、41の文書を1回の実行で数分以内に照合しました。 評価用に仕込んだ4件の誤りを4件とも見つけ、その中には収益の注記に隠された50万ポンドの差額も含まれていました。 そして、すべての残高を裏付けの明細と照合して、各確認の記録を残しました。 人がやれば一晩中、場合によっては数日かかる作業です。

素晴らしい成果に違いない。 そう思いたくなりますが、数字の読み方には注意が要ります。 「約40%改善」という数字は、その財務諸表ワークフローの評価成績が上がったという意味であり、時間や人が40%減ったという意味ではありません。 全タスクの平均だと約3%の改善にとどまります。 4件中4件というのも、仕込んだ誤りの検出結果であって、未知の誤り全体の保証ではありません。

また、これはLegora独自のエージェントでの検証であり、Copilotの導入事例ではありません。 Astraというモデルの能力を示した事例です。 それでも、すべて照合して記録を残すのはAI、判断は人、という形は経理に持ち込めます。 月次で会計ソフトの残高と銀行・請求書・台帳を突き合わせる作業で、不一致の一覧と根拠まで出させ、最後に承認するのは経理担当。 この分け方が現実的です。

何から始めて、何を任せないか

実務に持ち込むにあたって、気をつけるべきことが3つあります。

承認をAIに頼らない

「承認してください」とAIに指示するだけでは安全装置になりません。 Studioの画面操作のFAQには、人への確認は確率的に発生するもので、必要な場面すべてで止まる保証はないと書かれています。 止まってほしい場面で止まらないことがあるのです。 送金や権限の変更は、AIの自己判断に頼らず、業務システム側の権限と明示的な承認の工程で制限する必要があります。

費用は月額に含まれないものがある

Coworkは従量課金の設定が必要です。 Studioの課金資料にも、画面操作の利用はMicrosoft 365 Copilotのサブスクリプションに含まれないと明記されています。 有料Copilotなら追加料金なし、ではありません。 モデルや実行回数、再試行、実行環境で変わるため、事前の確認が必須です。

成功率は用途で大きく変わる

公式のFAQによれば、Webの作業は約80%、デスクトップアプリは約35%です。 同じ作業でも見た目やタイミングで結果が変わるとも書かれています。 35%は、手放しで任せられる数字ではありません。

だからこそ、始め方が決まります。 過去のデータで、読み取りと下書きだけの検証から始めるのです。 実在の個人情報、振込先、本番の更新権限は使いません。 新しいモデルだから安全になった、とは考えないことです。

まとめ

Copilotは、すでに一部の仕事を「実行する」段階にあります。 次に考えるべきは、自社のどの工程を、どの機能と権限で、どこまで任せるかを自分で決めることです。 最後に、本記事の要点をまとめます。

  • Astraが展開されたのはCoworkとStudioのみ。まずは自社でCoworkが有効かを確認する。
  • 頭脳(モデル)と実行機能・許可は別物。手を動かす機能は設定次第で決まる。
  • 始めるなら読み取りと下書きから。承認はAIに頼らず、システムの権限と人の工程で作る。

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