
月末になると、勤怠システムを見ながら給与ソフトに手で数字を打ち直している。 同じ数字を2回入力する、いわゆる「二重入力」である。
地味な作業に見えるかもしれない。しかし、これは単に時間が溶けるだけの問題ではない。 勤怠のデータを給与に手で打ち直す途中で、残業時間を1桁打ち間違えるような事故が起きる。 給与は法律で決まった支払いである。ミスをすればやり直しになり、下手すると従業員からの信頼問題に発展する。 以前、給与計算の支給後の修正がどれほどの手間を生むかを考えたことがあるだろうか。 二重入力は、そのミスの温床になっている。
なぜこんな面倒なことが起きるのだろうか。
なぜ二重入力が起きるのか
人間がシステムの間を埋めている
現場を見ていると、理由ははっきりしている。 勤怠と給与を、別々のタイミングで、別々の理由で導入しているからだ。 最初に、タイムカードから脱却しようと勤怠システムを入れる。 しかし、給与は昔から使っているソフトのままである。 この2つが会話しないため、間を人間が埋めることになる。 これが二重入力の正体である。
給与計算において、支給後の修正は避けたい。 事故を防ぐには、人間が間を埋める状態から抜け出す必要がある。 そのための道は大きく4つある。
CSV連携による手渡しの自動化

導入のハードルが低い基本の形
一番ベーシックな解決策は、CSV連携である。 **CSV**とは、表計算のデータをシステム間で受け渡しするための共通ファイル形式を指す。 エクセルの親戚のようなものだと考えてよい。 勤怠システムから労働時間や残業のデータをCSVファイルとして書き出し、それを給与ソフトに読み込ませる。 手で1件ずつ打つのに比べれば、ファイル1個で一気に入るため劇的に速くなる。
多くのシステムが対応しており、特別な契約も難しい設定もいらない。 今使っているシステムのまま、出力と取り込みの手順を覚えるだけで始められる。 中小企業が最初に手をつけるなら、まずこれで十分な効果が出る。
うまくいくに違いない。 ところが、実際に運用してみると弱点も見えてくる。 人が出力して取り込む操作を毎回やる必要があるからだ。 ファイルを出して、フォーマットを整えて、読み込ませる。 この手作業が残るうえに、月に一度の作業であるため手順を忘れがちである。 また、ファイルをやり取りする以上、置き場所やメール添付時のセキュリティにも気をつける必要がある。 あくまで「書類の手渡しを楽にした」段階と言える。
API連携による直接の会話
直通の専用線で二重入力をなくす
手渡しすらなくしたいなら、API連携という選択になる。 **API**とは、システム同士が直接データをやり取りするための窓口である。 人間を介さずに、勤怠システムと給与ソフトがインターネット越しに直接会話する。 CSVが書類を手渡しする手段なら、APIは直通の専用線でつながっている状態に近い。
勤怠を締めると、ボタン一つ、あるいは自動で給与側にデータが流れ込む。 ファイルの出力も取り込みもいらない。 外にファイルを出さずに直接データが流れるため、マイナンバーのような機密データも比較的安全に渡せる。 ファイルの受け渡し自体をなくせるため、セキュリティ的にも有利である。
理想的に見えるだろう。 ただ、つなぎたいシステム同士がAPI連携に対応している必要がある。 組み合わせによっては対応していない。 また、最初の設定には少し専門知識がいる。 とはいえ、最近は同じメーカーの製品であれば、最初から連携できるようになっているものも多い。
つながらない場合の第3・第4の選択肢

iPaaSで通訳を立てる
もし、今のシステムがAPI連携に対応していなかったらどうするか。 ここで登場するのが、**iPaaS(アイパース)**である。 これはいろんなシステムの間に立って、連携を仲介してくれるサービスを指す。 直接会話できないシステム同士であっても、間に通訳を立てれば会話できる。
プログラミングなしで、画面の操作だけで連携を組めるものも増えている。 対応していないからと諦める前に、検討する価値がある。
一体型システムに乗り換える
そもそも論として、勤怠と給与が最初から1つになっている一体型システムに乗り換える手もある。 同じ基盤でデータが流れるため、連携という概念そのものがなくなる。 二重入力もフォーマットのズレも起きない。
一番ラクそうに思える。 しかし、今のシステムに慣れており、既にデータが溜まっている状態からの乗り換えコストは無視できない。 新しくシステムを入れる場合や、バラバラの状態で困りきっている場合は有力な選択肢になる。 既存のシステムを活かしたいなら連携を選び、根本から変えるなら一体型を選ぶことになる。
自社はどれを選ぶべきか
活かすか、乗り換えるかの分かれ道
では、自社はどれを選ぶべきか。 判断の分かれ道は、今のシステムを活かすか、乗り換えるかにある。
活かす場合は、まず今の勤怠と給与がAPI連携に対応しているかを調べる。 対応していればAPI連携を選ぶ。二重入力がゼロになる。 対応していなければ、iPaaSで仲介できないかを見る。 それも難しければ、当面はCSV連携で手作業を最小化し、次の入れ替えのタイミングで見直すことになる。
乗り換える場合は、一体型に寄せる。 これからどちらかを入れ替えるなら、一緒にできるものを選ぶと連携の悩みが最初から消える。
そうしたかった、とは思う。 ただ、ツールを選ぶ前にやるべきことがある。 勤怠の締めから給与の確定まで、誰が何をしているかが見えていないと、どのツールが合うかも判断できない。 結局、ツールの前に業務の棚卸しが必要になる。
まとめ
勤怠と給与の連携について、以下の点を持ち帰ってほしい。
- 勤怠と給与のバラバラ問題の正体は、人間が間を埋める二重入力である。
- 解決の道はCSV連携、API連携、iPaaS、一体型の4つがある。
- 今のシステムを活かすならAPI連携が第一候補となり、乗り換えるなら一体型が有力になる。
- どのツールを選ぶにしても、まずは業務の流れを整理することが先決である。
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