Microsoft 365 Copilot 7月更新 ― バックオフィスに効く4つの新機能

マイクロソフトが毎月発表する更新情報は、すべてを追いきれないと感じることがあるだろう。

実際、2026年7月31日に公開されたMicrosoft 365 Copilot Blogには、公式の表示で「13分で読めます」とある分量の中に数十個の機能が並んでいる。

しかし、すべてを追う必要はない。バックオフィスの実務を変えるものだけを抜き出すと、要点は4つに絞られる。

モデルが選べるようになった

Copilotを使っていると、裏側には常に1種類のAIがいると思い込んでしまう。

しかし、7月の更新でその前提は崩れた。作業に合わせてAIモデルを自分で選べるようになっている。

OpenAIのGPT-5.6が全体で使えるようになっただけでなく、Anthropicのモデルも追加された。Word・PowerPoint・CoworkではClaude Sonnet 5が、ExcelではClaude Opus 5が選べる。さらにCoworkには、長時間の作業向けとしてClaude Fable 5も用意されている(既定はオフ)。

使う側は迷うかもしれない。ただ、「Copilot=ChatGPT」という理解はすでに古い。手元の作業に合ったモデルをアプリ内で指名する時代になっている。

入口も1つにまとまった。Copilot Chatの入力欄で、Word・Excel・PowerPointのエージェントを「@メンション」で呼び出せるようになっている。アプリを切り替えずに文書や表を作れる。

Coworkが「見張って、先に動く」

Microsoft 365 Copilot 7月更新 ― バックオフィスに効く4つの新機能の解説スライド

AIは、こちらが聞くまで動かないものだろうか。

これまではそうだった。しかし、自律的に作業を進めるCoworkの7月更新で、AIは「向こうが気づいて動き出す」ものに変わった。

その本命が、イベント起動タスクである。送信者、@メンション、キーワード、イベント名の4つをきっかけに、AIにメールとTeamsを見張らせておくことができる。条件を満たした瞬間にAIが捕まえ、頼む前に返事や作業を用意する。設定は普通の言葉で書くだけで済む。

これは、経理の仕事そのものである。特定の取引先から請求書のメールが来たら、内容を確認して起票の準備をする。この作業には、メールを待つ時間と、来たのに見落とす事故が常につきまとう。イベント起動タスクは、その両方をなくす。人が見張らなくていい仕事を手放せるということだ。

見張るだけでなく、作業の範囲も広がった。Microsoft Edgeにサインインしていれば、CoworkがSaaSツールや社内ポータルを横断して操作できる。勤怠システムや経費システムを行き来する時間が減る。

さらに、業務マニュアルの置き場所も変わる。Customizeタブに「.md」「.zip」「.skill」のファイルをドラッグ&ドロップするだけで、自分の手順書をスキルとして登録できる。特定の人への共有も可能だ。人が読まないWordの手順書が、AIが読んで実行する手順書に変わる。

Excelの体裁づくりが消滅する

月次の報告資料を作るとき、中身の分析よりも、罫線を引いて色を合わせる体裁づくりに時間を取られていないだろうか。

その手作業が、2つの機能で消滅する。

1つ目は7月に提供されたブランドキットである。Microsoft 365のブランドセンターに承認済みの色やフォントを登録しておけば、「@brand-kit」と呼び出して「このシートをブランドに合わせて」と頼むだけで、表やグラフに自動適用される。

2つ目は8月提供のテーマデザインだ。こちらは2026年7月28日のExcel Blogで発表された。「@theme-design」と指示すれば、配色をそろえ、レイアウトを組み直し、重要な数字が目立つように整えてくれる。

体裁以外の障害も減っている。8月にはPower BIのデータ連携が強化され、レポートを添付するだけでCopilotに分析させられるようになった。行レベルのセキュリティも維持されるため、わざわざデータをエクスポートして手作業で貼り合わせる必要はない。また、これまで必須だった「自動保存オン」の条件が外れ、自動保存がオフのブックでもCopilotが使えるようになっている。

管理者側は「測る」段階へ

Microsoft 365 Copilot 7月更新 ― バックオフィスに効く4つの新機能の解説スライド

ここまでは現場の話である。一方、経営や管理者向けの機能を見ると、マイクロソフトの意図がはっきりと表れている。

AIを「使わせない」段階から、「使わせた上で測る」段階へ軸が移った。

もちろん制限機能もある。Web検索の参照先から最大1,000のドメインを除外したり、Purview(データ保護機能)を使って外部からのメールをCopilotの要約や根拠に使わせない設定が可能になった。

しかし本命は、利用状況を測るAgent 365ダッシュボードの登場である。グループ別の利用率、継続率、よく使われているエージェントが一覧できる。さらに、コネクタの利用状況レポートを見れば、Copilotの回答のうち、どれだけが社内データに基づいていたかまで分かる。

コスト管理も実務に即して改善された。上限に近づいた際のアラートが分かりやすくなり、複数の上限設定がある場合は最も高い設定に留まる。さらに、上限に達しても作業中のタスクは最後まで完了し、その超過分は課金されない。途中で作業が止まる事故を防ぐ作りになっている。

AIをどれだけ使い、どう業務に効いているかを、経営が数字で評価する時代に入ったということだ。

まとめ

数十個の新機能から、バックオフィスに直結する変化を見てきた。最後に、中小企業がいま取り組むべきことを3つに絞って置いておく。

  • イベント起動タスクを1本作る:まずは「特定のメールが来たら要約して自分に投げる」程度の、失敗しても事故にならないものから始める。
  • 手順書をAIが読める形に置き直す:手順を言語化し、スキルとして登録する。AIが読む前提になれば、業務マニュアルを書く価値が戻ってくる。
  • モデルが選べることを現場に伝える:用途に合わせてAIを選べる事実を教える。同じライセンスでも、これを知っているかどうかで成果が変わる。

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